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<<   作成日時 : 2006/09/07 08:31   >>

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食品分析における固相抽出の効果的な利用方法(7)


3.2 食品試料別前処理方法のアプローチについて

一般に食品分析といっても、その固形形態は様々であり、それぞれのサンプル形態に応じた前処理が必要になってくる17)。加工食品などでは、分析対象試料が脂溶性物質を主成分とするのか、水溶性物質を主成分とするのかが第一段階の前処理に大きく影響する。また、作物の破砕には、植物の細胞壁を破壊することが可能なブレンダー(ポジトロンホモジナイザー)を使用すると効率的である。


3.2.1 乳製品(順相、逆相、イオン交換固相使用)

牛乳などは、水や緩衝液で希釈して直接処理する。必要に応じて除タンパクする。チーズの場合はホモジネートする。チーズの組成は牛乳に類似しているが、脂肪類が多いので、選択する固相抽出によりホモジネートするときの溶媒を選択する。


3.2.2 農産物(逆相、イオン交換固相使用)

トマトは水や緩衝液と有機溶媒の混合液でホモジネートする。酸処理より分解が可能であるが、その後のpH調製に注意が必要である。トウモロコシは極性溶媒中でホモジネートし、必要に応じて、水、緩衝液で希釈する。オレンジは、目的成分と選択する抽出方法により、逆相、順相を使い分けるとよい。大豆については、有機溶媒でホモジネートし、上清を適当な溶媒で希釈する。植物油では、極性が低いのでヘキサンなどの低極性溶媒で希釈する。


3.2.3 穀物製品

コーンミール、パン、飼料:脂肪含有量が多い場合には、最初に脂肪抽出を行う。希望抽出方法に応じた溶媒でホモジネートする。


3.2.4 肉類

ベーコン類では、脂肪含有量が多いので、低極性溶媒を用いてホモジネートする。レバーなど、肝臓組織は、乳状になりやすいため、これを抑えるためには飽和食塩水でホモジネートする。脂肪分が多い場合は、ヘキサン等の低極性溶媒を用いる。ホモジネート後、上清を抽出溶媒で希釈する。脂肪、油脂は低極性溶媒で希釈する。

3.2.5 菓子類

糖蜜は、水または水系緩衝液で希釈し、粘土を下げ、ハンドリングを向上させてから、処理を行うと良い。チョコレート類の場合は、脂肪含有量が高いので無極性のマトリックスとして取り扱う。低極性のヘキサンなどでホモジネートする。必要に応じて水酸化カリウム/メタノールでケン化する。

3.2.6 飲料食品

ぶどう酒、清涼飲料水は非常に極性が高いため、水や緩衝液で希釈した後、必要に応じてpH調製を行う。コーヒー、紅茶、緑茶の抽出液の場合は、微粒子を含んでいるため、水で希釈濾過する。必要に応じてpH調製も行う。また、葉や豆の場合はすり潰し、分離目的成分の性質に合わせた有機溶媒で直接抽出する。

3.2.7 クリーム状加工品(逆相系、順相系)

クリーム状の加工品には、水溶性のものと油性のものがあるので、注意する。水溶性の物は、メタノールなどの極性有機溶媒で希釈後、水や緩衝液で希釈し固相で処理する。油性の物は、ヘキサンなどの低極性有機溶媒に溶解し、順相系の固相で処理を行う。


3.3 濃縮乾固に関する問題

残留農薬分析を行う際、ホモジネート処理後の予備濃縮、最終クリーンアップ終了後の濃縮作業が必要となってくる。せっかくのクリーンアップ操作も、この操作を誤ると、全てが無駄になってしまうので、細心の注意が必要である。ほとんどの、液々抽出や固相抽出処理では、抽出後の回収溶媒をロータリーエバポレーター、KD濃縮管、窒素パージ装置などにより、濃縮乾固後、適切な溶媒に再溶解(GCであれば、ジクロロメタン、ヘキサンなど注入に適した揮発性溶媒。LCであればピーク形状の影響が少ない移動相などで行う)を行っている。

現状では、この操作にかなりの比率の時間と労力を費やしている。また、揮発性の高い成分などは、濃縮時に完全に乾固をさせてしまうことによって、この処理での農薬回収率が減少する恐れがある。これらに対応するために、近年では、乾固防止剤として、濃縮前に、ポリエチレングリコール(PEG)を少量添加して、農薬の気散を防止したりする報告[15-16]や、GCではPTV注入口による直接導入や、LCではミニカラムによるスイッチングを利用した大量注入法が検討されている[18]。これらの手法は、窒素パージ中のコンタミネーションの影響を減少させさり、濃縮時間の省略や前処理の自動化を手助けする物として今後の技術開発が期待される。



4 最新情報

食品分析における固相抽出法を中心とした前処理方法を紹介してきたが、前処理技術の最近の動向を紹介する。固相抽出法は簡便で、コストも低く誰にでも使用することが容易であるが、一方では各分析機関や、分析室間での分析値の信頼性や精度管理の必要性がうたわれている。精度管理やスクリーニングに貢献する自動化システムの利用に関する情報の需要は高い。また、農薬分析においては、農薬自体が非常に不安定な化合物であるため、なるだけ、前処理工程を簡略化し、すばやくGCに注入することが望まれている。そこで、簡単なホモジネート処理とろ過処理だけで、GC/MSに分析試料を導入することが可能なガスクロマトグラフィーのための新しい注入テクニックが検討され始めている。

4.1 食品分析における自動化技術の紹介

食品分析に応用できる自動化装置は、大きく分類して、カートリッジ固相抽出用、ディスク固相抽出用に分類される。カートリッジ固相を自動化するシステムは、複数検体の同時処理が可能であり、固相コンディショニングからクリーンアップ、溶出、濃縮乾固直前までの全工程を全自動で処理できる特長を持っている[18]。この間の処理工程は、すべて、密閉系で行われるため、実験室内雰囲気中の微量有機物の阻害影響を受けない特長を持っている。このため、飲料食品中(パックや容器からの微量成分の溶出の影響などのスクリーニング目的に最も向いている)の有機物モニターなどの応用が期待されている。

一方、カートリッジ固相抽出は、サンプル量に応じて処理時間がかかるのが難点である。そのような場合、ディスク型固相の使用が有効である[19]。佐藤らは、ディスク型固相抽出を作物残留農薬類の抽出に適用し、30成分以上の農薬の検出20)に成功している。この手法は、作物20g相当を一度ホモジネートした後、残渣を吸引ろ過で取り除き、溶媒を留去する。その後、10%食塩水を200mL程度加えて予備調製を行う。この調製液をSDB系のポリマーディスクにより、逆相固相抽出を行い、酢酸エチルなどで、目的性分を溶出する迅速法である。従来のカートリッジでは、10/minの処理スピードに対し、ディスクでは、200mL/minのスピードで処理が可能でり、従ってトータルの処理時間もディスクの使用により、約1/5-1/10程度に短縮可能である。近年ディスク型固相抽出専用の自動化装置[21]が市販されるようになり、食品分野での応用が期待されている。




参考文献
[1] Nigel J. K. Simpson, "Solid Phase Extraction", Marcel Dekker, Inc.,2000
[2] 高柳学、小林貴史、古庄義明、第11回環境化学討論会要旨集、560-561(2002)
[3] Pub Med http://www.pubmedcentral.nih.gov/
[4] 日本工業規格JIS K0128「用水・排水中の農薬試験方法」
[5] 日本工業規格JIS K0312「工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」
[6] 秋山由美、矢野美穂、三橋隆夫、武田信幸、辻正彦、食衛誌、Vol.37、No.6、351-362
[7] 残留農薬迅速分析法開発検討委員会、食品衛生研究、Vol.45、No.9、31-49(1995)
[8] Nakamura Y., Tonogai T., et al, J. Agric. Food Chem. 42, 2508-2518(1994)
[9] http://www.epa.gov/epaoswer/hazwast/test/main/.htm
[1] Milton A. Luke, 8th Inr Congr Pestic Chem Options 2000 1994, 174-182(1995)
[11] Cairnx, Milton A. Luke, et al, Rapid Commun. Mass Spectrom, 7, 1070-1076(1993)
[12] 残留農薬迅速分析法開発検討委員会、食品衛生研究、Vol.47、No.5、27-33(1997)
[13] 外海泰秀、津村ゆかり、中村優美子、柴田正、食衛誌、Vol.39、No.1、13-25(1998)
[14] 雑賀技術研究所 http://www.saika.or.jp/
[15] 谷澤春奈、佐藤元昭他、第83回日本食品衛生学会学術講演要旨集、51(2002)
[16] 佐藤元昭、農薬分析に関するセミナー講演要旨集、1、1-7(2002)
[17] 最新固相抽出法ガイドブック、ジーエルサイエンス(株)
[18] 古庄義明、食品と開発、Vol37、No.7、p45-48(2002)
[19] 佐藤元昭、古庄義明他、第48回全国水道研究発表会講演集、482-483(1997)
[20] 佐藤元昭、松川陽子他、第22回農薬残留分析研究会要旨、42-50(1999)
[21] Horizon Technology http://www.horizontechinc.com/
[22] 武井義之、重黒木明、小川茂、第11回環境化学討論会要旨集、564-555(2002)




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・食品分析における固相抽出の効果的な利用方法(1)へ



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