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zoom RSS オンサイトASV元素分析計の紹介

<<   作成日時 : 2006/02/25 16:36   >>

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オンサイトASV元素分析計の紹介です。

最近需要の高いオンサイト分析についていろいろまとめています。
私の検討しているシステムは、2つです。

☆ アノーディックストリッピングボルタンメトリー(ASV)装置
参考Webサイト:http://www.gls.co.jp/product/catalog-28/02/02.html

☆ SPE−蛍光X線装置
参考Webサイト:http://www.siint.com/products/SEA1100.html


先日アノーディックボルタンメトリー(ASV)の方をまとめたので、個人メモ録としてUpしておきます。興味ある方は参考までご覧ください。
SPE−XRFのほうは、学会発表が一段落したらUPします。


1.はじめに

近年、WEEE, RoHs指令や土壌汚染対策法案に対する対応から元素分析における機器導入を新たに検討する機会が増加傾向にある。現状、汎用元素分析計には、原子吸光高度計(AAS)、ICP発光分析計(ICP-AES)、ICP質量分析計(ICP-MS)、蛍光X線(XRF)などが利用されているとおもわれる。これらの機器は、現状では分析室での高感度元素分析を可能としている。

一方、屋外での使用を想定した元素分析計については、広く普及しているシステムが見あたらない。オンサイト(現場)分析の領域ついては、比色計、吸光光度計を利用した物があるが、検出感度は、ppm前後のものが主流であり、高感度が要求される環境基準値レベルのスクリーニングにそのまま適用できる物が少ない。

このような背景の中で、小型でオンサイト分析が可能である手法を検討してきた。その中でストリッピングボルタンメトリーを採用したシステムの有効性に着目し、現場分析への適用を試みている。今回紹介する装置は、ストリッピングボルタンメトリー(SV)を測定原理に持つ汎用小型装置である。本装置は、測定元素がPb、Cd、As、Hgなどの一部の重金属類に限定されてはいるものの、検出感度が高く規制値や基準値のモニタリングへの適用が期待できる。検出限界はICP-MS、ICP-OESと同程度(Pb、Cdイオンで約0.1ppb)であり、圧倒的な高感度により十分に実務に耐えられるものである。

2.ストリッピングボルタンメトリー

ストリッピングボルタンメトリーは、電気化学に基づく検出手法である。陰極、陽極を利用し、電極表面における金属イオンの析出と再溶出を繰り返すことによる電子のやりとりを利用する。

金属イオンのやりとりは、一般に電解セルと呼ばれる測定溶液がはいる容器と、ポテンショスタットと呼ばれる、参照電極、作用電極を備えたユニットの間で行われる。(図1)

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電解セルにセットされた電極において、電極がマイナスにチャージされると、セル内の溶液中に存在するフリーの金属イオンが、このマイナスにチャージした陰極に析出される。このときに、金属イオンが複数析出される。金属析出時の金属種の選択性はない。しかし、析出後に電極の電位を段階的にプラス方向にシフトしていくと、個々の金属種特有の電位において、特定イオンが電極表面から再び電解液中へ再溶出する。このとき、電極間に微量電流が流れる。わずかnAレベルで発生するシグナルをポテンショスタットで読みとることにより、個々の微量イオンを検出することが可能である。(図2)

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本手法は、作用電極、対極、標準電極からなる3極式を採用している。作用電極には、グラファイト、白金、金、などが用いられることが多い。最近の新型電極では、電極先端を限りなく微少にしたもの(ナノバンド電極)を使用している。写真1の拡大写真に示すように、数μmおきに100本もの微少電極を櫛形に成形したものを採用している。

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電極を微少化し束ねることにより、従来使用されてマイクロ電極などに比較して、ナノバンド電極では、より高感度検出が可能になる。(図3)これらの電極表面には、イリジウム、金、カーボンなどが用いられており、検出元素に応じて使い分ける。

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SVで利用する作用電極では、電極表面において金属析出・溶出を繰り返して連続測定をするため、一定の測定回数ごとに電極を研磨する必要がある。市販装置によっては、この電極研磨による表面摩耗のために電極寿命が長くないという弱点があった。新型電極では、この弱点を回避するために、電極表面に薄膜金属をコーティングする技術を採用した。

金属イオンのやりとりは、薄膜コーティング上でやりとりされるため、電極本体を保護できる利点がある。サンプル測定時に、金属薄膜が汚れたときには、汚染した薄膜を磨き落とし、あたらしく金属薄膜をメッキし直せばよい。このことにより、常に新しい電極表面を保ち、高い検出感度の維持が可能である。さらに、本体を痛めないため、電極寿命を飛躍的に長くできる。(測定試料にもよるが、おおむね通常使用で1-2年は使用可能)

作用電極の電位のコントロールにより得られたシグナルを増幅・波形処理して得られたグラフ化をボルタモグラムと呼ぶ。専用の波形処理ソフトにより、ピーク面積、高さを求めることが出来る。イオンの濃度とピーク面積、あるいはピーク高さの関係をプロットしていけば、検量線によりイオン濃度を算出することが可能である。

イオンの定量は、あらかじめ登録しておいた絶対検量線により、概算値を半定量することが可能である。迅速性が求められるときには、非常に有効である。また、サンプルマトリックスの影響を相殺して、より精度の良い定量値を求める場合は、測定試料にその場で直接標準試薬を添加して標準添加法により計量できる。標準添加法を簡単に行える点も本システムの特徴である。

3.ASV装置の特徴・特長

写真2に本装置のシステム例を示した。ポータブルタイプとベンチトップタイプの2種類のラインアップがある。ボルタンメトリーを採用しているためシステムそのものが簡易であり、本体をコンパクトに設計可能である。表1に仕様を示した。初期導入コストはICP-MSの約10分の1程度である。消費電力も少なく、ポータブルタイプでは、PCバッテリー駆動による長時間稼働も可能である。また、ICP分析のように特別な供給ガスなどが必要ないため、どこでも測定が行え、屋外、屋内どちらに置いても運用可能である。測定時に必要なものは緩衝溶液であるため、1検体あたりのランニングコストが安価である。

一方、サンプルの測定時の様子は、写真2のベンチトップタイプで確認できるように、電解セルとよばれるサンプルカップに電極を挿入して検出する。従って、原子吸光やICP手法のように試料吸引、噴霧、原子化、プラズマ発光化、などして、試料自体を消費してしまう事がない。従って、測定後の検体は別様器に移し替えて中期保管、後日再測定などが可能である。

4.実試料への適用について

実試料への適用について述べたい。電極を利用したSVは、基本的に水溶液の物に対して有効である。従って、飲料水、環境水、排水、工業用水などがもっとも得意とする領域である。また、飲料食品など液状の物で微粒子を多量に含む物は、微粒子を取り除く前処理が必要なる。固形試料の場合は、固-液抽出か酸分解を行った後、溶液に対して希釈、緩衝液添加によって測定が可能である。以下に測定のポイントをまとめる。

4-1.水道水
水道水の場合は、マトリックスの影響がほとんど無いため、あらかじめ調整した緩衝液添加してそのまま測定が可能である。希釈率も2倍程度でよい。(図4参照)

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4-2.排水・工業用水
微粒子のある場合、事前にフィルターろ過(0.45μm)を行う。水道水よりも希釈率を上げる必要がある。通常10倍から50倍程度行う。有機溶媒が20%以上混入している場合は、有機溶媒比率が10%以下になるように希釈率を考慮する。非水系の溶剤のばあいは、酸性溶液に抽出するか、固相抽出により、金属イオンを酸溶液分離してから測定する。排水には、通常の水道水と違って、高濃度Fe、Ca、Na、などの共存マトリックスが存在するケースがある。たとえば、塩濃度が高いと、既存測定機器の原子吸光やICP発光による測定では、試料吸引ノズルでの塩の析出や、測定干渉により、微量重金属の測定が阻害される。一方、ボルタンメトリーでは、溶液中に電極を接触させるだけなので、吸引ノズルや噴霧による影響などを考えずに、簡単に測定することが可能である。元素特有の測定電位を用いているので、共存元素の影響もうけにくい。従って、高マトリックスの液体試料でも比較的簡単に選択的な検出が可能である。

4-3.環境水・地下水
微粒子の影響を除く処理を行う。サンプル中のトータルの重金属をモニターしたい時は、微粒子中の重金属濃度も重要になるため、ろ過による処理よりも、事前に酸処理を行う。微粒子の溶解処理後、緩衝液により希釈して測定する。

4-4.土壌汚染モニター
土壌の場合、告示法による溶出試験、あるいは、簡易抽出法によってあらかじめ重金属類を抽出する。抽出液中の土壌微粒子は、ろ過により取り除く。ろ過液を緩衝液希釈してそのまま測定可能である。環境基準値レベルであればこの程度の処理で十分に抽出液中の10ppbレベルの金属イオンを検出可能である。目的に応じて目的元素を固相抽出により濃縮、分離してより選択的な高感度分析を行うことも可能である。(図5)

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4-4.鉛フリーハンダなど】
WEEE, RoHs指令により、基盤などに利用されるハンダ中のPbを管理したい場合、ハンダそのものを電極で検出できないため、一度溶解処理する。ハンダは、硝酸ベースで簡単に溶解できるので、少量の酸で溶解した後、緩衝液で希釈処理して測定可能である。(図6)
酸処理には、ホットプレートやマイクロ波分解容器が有効である。

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5.今後の展開と応用例の可能性
現在、本手法を有効に利用するための関連ユニットや前処理方法ついてさらに開発を進めている。将来これらの手法が簡易検出法として、元素分析の労力負担の軽減につながるよう努力したい。





以上です。参考になれば幸いです。


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