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zoom RSS WEEE, RoHs, ELVに貢献する重金属分析のための樹脂の分解技術

<<   作成日時 : 2005/09/16 22:06   >>

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「WEEE, RoHs, ELVに貢献する重金属分析のための樹脂の分解技術」に関する原稿を執筆しましたので、Upしておきます。

【はじめに】

WEEE, RoHsに関連し、難分解性樹脂中の重金属類の測定方法に関する関心が高まっている。近年検討されている手法としては、(1)EN1122をベースとしたケルダール分解法と、(2)マイクロ波分解装置を用いた密閉容器による湿式分解法がある。

プラスチック試料中Cd, Pb, Cr, Hg を効率よく分析するための前処理方法について、筆者らの最近の知見を紹介しながら、現手法の問題点を整理し、解決のための前処理システムの上手な組み合わせ方法を提案する。

【現行手法について】

WEEE, RoHs, ELV指令対象の樹脂中重金属の測定のための分解手法として検討されている。ベースとなるのは、(1)EN1122をベースとしたケルダール分解法による樹脂中Cdの分析方法である。

本手法は、元々Cdをターゲットにした手法であるため、WEEE, RoHsで対象となるPb, Hg, Crに対応するためには若干の改良が必要である。ENメソッドをベースとした改良メソッドに置いて、標準プラスチック中のPb, Cd, Hg, Crの四元素を対象とした酸分解手法を確立した。

標準プラスチック0.5-2g相当量を精密に計量した後、ガラス分解チューブに入れる。続いて、突沸を防止するための沸騰石代わりにガラス棒を入れる。濃硫酸10-15mlを量り分解中部に合わせ入れ、試料のセットが完了する。

分解は、170、240、340℃の段階的昇温分解を行う。240℃まで段階的に昇温することがポイントである。昇温スピードが速すぎると、樹脂分解の反応が激しすぎ、分解チューブ上部まで飯能駅が上昇して危険である。昇温速度をステップごとに段階的に上げることでこの問題点は、クリヤーされる。

340℃に昇温することで、市販濃硫酸の沸点320℃より若干高めの温度にて、完全分解と、還流器に酸蒸気のトラップを取り付けた吸引システムとの併用により、硫酸乾固に移行する。

通常硫酸は飛びにくいので、より高温で処理しがちであるが、本システムを利用することで、最小限の加熱で、分解終了後の過剰硫酸を迅速に吸引流去できる。

硫酸が半量以下に除去できたら、一度空冷する。60℃付近まで冷却されるのを待って、30%過酸化水素水を1mlずつ段階的に10ml程度まで添加する。

このとき、余熱で発砲反応するので、十分に注意する。10ml加え終わる頃には、黒色に硫酸処理液が、黄色から透明色に変化する。

原子吸光向けの前処理であれば、これで完結する。ICP発光分析を行う場合は、この反応液を再加熱して、硫酸を過酸化水素水と240℃で供沸除去する。半量以下に反応液が除去できたら、再び空冷して60℃付近に戻るのを待つ。

続いて、濃硝酸を10ml程度添加して、120℃で再加熱し、硝酸マトリックスとして、ICP発光分析の調製試料とする。

これまでの行程を処理したときの各元素の回収率は、BCR680、BCR681において、良好な回収率を得ている。

一方マイクロ波分解では、硝酸-過酸化水素水ベースで密閉分解を行う。揮発性元素損失のリスクは押さえられるが、一回あたりの樹脂分解量を0.5g程度までスケールアップすることが困難である。

ICP発光や原子吸光のようにICP質量分析計のような高感度な検出器を持ち合わせていない場合に、試料分解量のスケールアップが容易であるケルダール分解手法をベースとしたほうがよいと考えている。さらに、この手法を効率的に行うための周辺技術として固相抽出法を現在検討している。

固相抽出法は、従来、ダイオキシン、PCB、環境ホルモンなどの環境水中の有機物分析の前処理方法として広く採用されてきた手法である。しかしながら、近年、金属イオン対象の製品も市販されるようになり、重金属測定の重要増加とともに一躍注目を集めている。現在までに検討された金属イオン捕捉固相抽出剤の特徴を整理し、酸分解システムとの組み合わせ方法について提案する。

【無機分析向け固相抽出の種類と特徴】

無機元素イオンの濃縮精製に使用される固相抽出剤は、大きく分類して3種類ある。

(1)イオン交換樹脂
イオン交換樹脂は昔から汎用されている固相分離剤である。固相担体にイオン交換基を化学結合させた物を用いており、基材には、シリカ系、ポリスチレン系、メタクリレート系などがある。カチオン交換、アニオン交換に分類される。カチオン交換では、K、Naをはじめとするアルカリ金属から、Ba, Ca等のアルカリ土類金属、Cd、Pbなどの重金属類、水中で陽イオンになるもとすべてが対象となる。同様にして、アニオン交換樹脂では、水中で陰イオンになり得る物がすべて対象となる。広範囲のイオンを捕捉できる反面、金属に対する選択制が低い点、高マトリックス試料(とりわけ塩濃度が高い試料)の場合目的成分の捕捉性に制限される点が難点とされる。

(2)キレート樹脂

キレート樹脂は、(1)のイオン交換樹脂の弱点を補う利点をもち、近年では重金属捕捉用の固相抽出剤としての主流をなす物である。官能基に、イミノ二酢酸基を導入したスチレンジビニルベンゼン系のポリマー樹脂が一般的である。

キレート樹脂の最大の利点は、Na, Kなどのアルカリ金属を捕捉しない点にある。また、Ca, Mgなどのアルカリ土類金属は一度捕捉される物の、酢酸アンモニウムやEDTA溶液により容易に除去できる点にある。この特徴を生かして、水中の重金属イオンを脱塩しながら濃縮する技術に優れている。


(3)分子認識ゲル(MRTゲル)

分子認識(Molecular Recognition Technologyの頭文字を取って以降MRTと略す)とは、ホストとドナーの関係を用いた金属イオン向けのアフィニティー固相抽出剤である。典型的なMRTゲルの官能基はブログのバックナンバーを参照されたい。

このように環状官能基のセンターに金属イオンが取り込まれると従来のイオン交換樹脂には無い高選択性、強い保持能力を発揮する。このとき、環状官能基のケージ枠にちょうどはまりこむ金属イオンは一度に多くない。ケージ枠より、大きい金属分子であれば取り込まれることが無く、逆に小さな金属分子の場合は、一度取り込まれても不安定であり、すぐに脱離してしまう性質を有する。

また、ケージサイズをコントロールするのと同時に酸素原子のかわりに他の原子を入れることにより、電子配勾性がかわり、K、Naの保持力が落ち、代わりに重金属、貴金属類が捕まりやすくなる。

【固相抽出剤と酸分解処理の組み合わせ】

(1)、(2)、(3)に述べたような固相抽出剤の内、とりわけ、(3)のMRTゲルを採用すると、従来困難とされてきた固相抽出処理の問題点を改善することが可能である。

第一に、酸性条件下でも目的金属の捕捉ができる点である。MRTはイオンによる電気的な結合能力が機能しているわけではなく、金属分子の立体構造を特異的に認識する。従って酸性条件であっても目的元素を脱着することなく保持が可能になる。

第二に非水系の溶液の中から、目的元素を抽出することが可能である。これより、有機溶媒中や、油系試料の中から、高選択な目的元素の捕集が可能になる。

第三に高マトリックス中からの目的元素の単離が可能になる。材料分析に置いては、主成分元素であるFeやNiが多量存在し、Pb、Cdなどの対象元素の測定は波長に大きな影響を与える供雑成分である。このような場合、妨害対象となるFeをとり除くか、NiやFeに親和性が無く、CdやPbに対して特性のあるMRTゲルを採用する。


【まとめ】

樹脂分解を行う際のポイントは、検体が少なく、揮発性元素の回収率を重視する場合は、マイクロ波分解システムが有効である。一方、スケールアップする場合は、開放還流システムであるケルダール分解を用いるとよい。さらに、検体数が多い場合にも、一度に何十本もの分解チューブがセットできるケルダール分解システムが有効である。また、分解処理終了後は、固相抽出技術、とりわけ分子認識ゲルによる高選択抽出を取り入れることにより、測定感度の向上、装置への妨害を緩和するなどの効果が期待できる。結論として、これら、複数の技術の利点を生かして柔軟に組み合わせることが重要である。



以上です。
記事が載るのは、10月号です。

では。

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