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<<   作成日時 : 2005/01/26 00:36   >>

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土壌・地下水浄化技術に貢献する重金属分析技術をまとめました。

1.はじめに
 2003年2月より、土壌汚染対策法案が実施された。これに伴い、土壌中重金属の測定法に対する関心が高まっている。本対策法によれば、土壌中金属の測定法は、環境庁告示46号(環告46)による溶出試験と、1M塩酸抽出による含有量試験を行うことになっている。環告46号溶出試験では、真水による6時間振とうが、含有量試験では、1M塩酸による2時間振とうが必要になる(1−2)。このような背景から、過去に重金属による汚染が指摘された地点や、汚染土壌の搬入が行われていた「履歴(土地)」を持つ地点など、明らかに汚染の可能性が存在する場合、短時間で簡易的に土壌中の重金属のスクリーニング分析を行う技術が必要とされつつある。したがって、重金属の簡易スクリーニング法を構築することができれば、汚染サイトの迅速マッピングが可能となり、作業環境をはじめとする安全対策に大きく貢献し、汚染の修復作業も短期間で行うことが可能である。

 さらに土壌汚染に関連する近年のトピックスとして、ヒ素中毒問題がある。ヒ素は、我々人体への暴露により、様々な急性毒性、慢性毒性を引き起こす有害元素3)であり、発がん性も高く、腎障害を引き起こすケースもある。古来より、毒薬として最も多く使用されてきた物質のひとつであり、現代においても、1998年に砒素カレー事件が発生し、一躍脚光を浴びた。環境中において、砒素は普通に存在するものであり、環境基準値においては、0.01mg/Lが規定されている。わが国では、箱根早川流域など、火山性温泉の湧出する地域において、ヒ素濃度が高い(4-6)ことが報告されている。これらの地域では、環境基準である0.01mg/Lを大きく上回るケースも報告されており(4-6)、流入河川中のヒ素濃度による人的被爆の問題や、河川水生生物への影響(4-6)について懸念されている。バングラディシュなどのように、自然汚染由来以外での地下水汚染などヒ素問題に対する関心も世界的なものとして高まりつつある。

 このような背景から、より迅速で、かつ現場で判定が可能である「ヒ素検出技術」の需要は高い。自然界においての砒素の存在形態に関しての報告が多数あるが、環境中には3価、5価の無機形態が多く存在すると予測されている。三価と五価では毒性が異なるとされており、また、環境中での酸化還元状態も不明な点が多く、今後は三価と五価の形態別分析の必要性が出てくるであろう。7)

2.ディスク型固相抽出を利用した土壌・飛灰抽出液、地下水中の微量元素分析への対応

固相抽出法とは、化学結合シリカゲル、ポーラスポリマー、アルミナ、活性炭などの固定相を用い、特定の目的成分を選択的に抽出・分離・精製する手法として、1980年代ごろから発展してきた前処理技術である。従来、この手法は、複雑なマトリックスを有する液体試料中から、目的の有機成分を分離するために利用されてきたが、1998年前後からキレート膜が登場し、固相抽出の無機分析への応用が報告されるようになった8-10)。固相抽出技術を応用することによって、土壌抽出液や飛灰抽出液中のマトリックスから、選択的な金属抽出を行う技法が確立され始めている。

2.1.ディスク型固相抽出

固相抽出を行うためのツールが、各社から市販されている。汎用される固相抽出剤のフォーマットとしては、シリンジカートリッジ型、シリンジバレル型、そしてディスク型に大別される。これらの中で、環境水試料の前処理としては、各種JIS法(11-12)で実績があり、水試料の迅速捕集が可能であるディスク型固相抽出媒体が、土壌・地下水関連のサンプルへの適用に適している。

 金属イオン向けの充填剤の種類としては、目的金属の特性に合わせ、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂、キレート樹脂を採用したものがある。いずれもポリスチレンゲルとPTFE樹脂から構成されているため、酸性、アルカリ条件下での使用が可能である。キレート樹脂を採用したものは選択性に優れ、海水のようにカリウムやナトリウムなどの塩濃度の高い複雑なマトリックスからでも、選択的に2価以上の遷移元素を捕集・回収する事が可能である。著者らは、このエムポアディスクによる固相抽出を利用し、河川水、海水、地下水等の各試料中から、鉛、カドミウムをはじめとする遷移元素、重金属類を選択的に分離精製する技術について、各種検討を行い報告した(8-9)。

2.2.ディスク型固相抽出を利用した油分除去処理(油分測定)

固相抽出法の利点として、金属イオン選択抽出の他に、従来から使用方法である有機物の捕集技術がある。土壌関連分析では、土壌抽出液や、湧き水、浸出水などに、油分成分が混入してくることが予測され、試料溶液中の油分成分が、既存のICP発光分析、原子吸光分析において障害となる。固相抽出剤の種類の中には、水中油分の捕集に特化した製品が各社から市販されており、これらの製品を実試料へ応用13)することにより(ほとんどろ過を行う要領で)、試料溶液中の油分を迅速に処理することができ、前処理操作が軽減される。

2.3.ディスク型固相抽出と可搬型蛍光エックス線を利用した重金属の形態別迅速分析法

固形である土壌分析の迅速非破壊分析として、蛍光エックス線が利用されている。蛍光エックス線は、他の手法に比較しても、分析のための前処理工程がほとんど不要で、固体試料中の元素成分のスクリーニングに威力を発揮する。近年では、過般型の装置が市販14)されるようになり、現場でのオンサイトモニタリングも可能である。

 しかしながら、地下水や土壌抽出液など、液体成分中の元素分析においては、十分な環境基準値を測定することが困難なケースがある。このような液体試料を蛍光エックス線で測定可能にするツールとしても、固相抽出剤が利用されている。前述した通り、ディスクタイプのものを利用すれば、吸引ろ過の要領で試料中の目的成分をディスク固相にトラップできるため、その固相ディスクを蛍光エックス線分析にかければ良い。この手法の利点は、第一に、測定感度を上げられる点にある。十分な検出感度レベルになるまで、ディスク型固相を用いて、試料中目的成分を均一に濃縮すれば、低濃度サンプルでも瞬時に解析が可能になる。

また、第二点として、金属成分等をディスク上に捕集しておけば、中期保存や運搬が、実試料のそれに比べはるかに容易である点が挙げられる。保管スペースもわずかであり、測定結果や状況に応じ再解析が必要な際は、いつでも再解析が行え、試料番号認識のラベリングも簡単に行える。2-3M程度の硝酸溶液で簡単に溶出回収できるため、この回収溶液をICP等の別手法で解析を行うことができる。1つの固相抽出処理手法で目的成分を濃縮すれば、サンプル保管や運搬の不便さを補うことができ、クリーンアップ手法の検討をしておけば、個々の機器に対して有利な測定手法を確立することが可能である。

3.ストリッピングボルタンメトリーを利用した可搬型小型分析計を用いた重金属の迅速スクリーニング

土壌汚染の問題がクローズアップされるなか、土壌の評価試験や汚染土壌浄化技術の検証に対するモニタリング手法に関しては、できるだけ、リアルタイムで低コストに実現したいという要望がある。近年、機器分析装置のブレークスルーとして、モバイル型分析機器、いわゆる「可搬型」検出器の台頭がある。土壌中のVOC成分のスクリーニングに関しては、可搬型のガスクロマトグラフィーがデファクトスタンダードとなるような様相を呈している。過般型の無機分析のツールとして、小型化しやすく低コストで製造しやすい等の利点からFIA分析装置や電気化学分析装置が製品化されている。

なかでも、小型電極を用いたASV(Anodic Stripping Voltammetry)法を利用した、ポーラログラフィーに関する応用例が報告15)されている。ASV法は、電極表面上で電気的に対象イオンを濃縮できるため、Cd, Pb, Asなどの重金属類の高感度分析が可能であり、飲料水、排水、土壌、建築現場などにおける分析事例など16-17)が多くある。

検出感度においては、Cd、Pbでサブppb、Asで数ppbレベルの検出感度をもつ。選択性が高く、従来の検出器でボトルネックとなっていたような、「共存元素のよる波長干渉の影響」や「共存する塩の影響」による測定妨害を受けにくい。また、測定時間が数十秒−数分で行える点も利点である。このため、試料溶液の調整も簡単なろ過操作と緩衝液による希釈程度で済み、現地での簡易スクリーニングツールとして有用であろう。

 最近になり、各種メディアの報道で土壌汚染が原因となって生ずる地下水のヒ素汚染の問題がクローズアップされている。わが国を含めたアジア諸国において、ヒ素の地下水汚染は、深刻な問題であり、より簡単なスクリーニング技術と浄化技術の要望がある。飲料水中に存在する砒素は、3価と5価のヒ素が主であり、有害性は3価の方が高い。3価の砒素は、環境水中の溶存酸素により、容易に5価に酸化されると言われている。このため、毒性の高い3価の砒素を分別検出するためには、現地でのサンプリング直後の迅速な測定が意味を持ってくる。

ASV法による砒素の検出では、3価、5価混在サンプル中の3価砒素を選択的に検出することが可能である。5価砒素を測定する場合には、サンプルに還元処理を行い、3価の状態に誘導してから、測定を行う手法が採られている。具体的な砒素の還元処理は、アスコルビン酸などの還元試薬とディスポーザブル容器、加温するための湯水かヒーターがあれば20-30分程度で行える。還元処理後トータル砒素の検出をおこない、あらかじめ測定しておいた3価砒素の測定結果とあわせて砒素の形態別存在比率が明らかになる。このように、ASV法を用いれば、現場(オンサイト)において、比較的低コストで簡易的に形態別砒素の分析が可能になってくる。

4.おわりに

 土壌、地下水浄化技術を評価するための効率的な手法としての分析技術を、試料の前処理方法と簡易検出法を中心に解説した。これらの手法が各種浄化手法の評価技術のみならず、今後の環境分析や、リスクコミュニケーションを図る一助として汎用されることがのぞまれる。

参考文献
1. 第3回 日本環境化学会 予稿集、日本環境化学会、2003
2. http://www.env.go.jp/water/dojo/law/kokuji.html
3. http://staff.aist.go.jp/k.marumo/clayreport/clayreport.html
4. 久永明、石西伸訳、環境汚染物質の生態への影響, 16, 東京化学同人,198
5. 石西伸ら監修、砒素一化学・代謝・毒性、恒星社厚生閣、1985
6. 日本薬学会編、衛生試験法・注解1990付追補、pp62-65、1995
7. 貝瀬利一他、第9回環境化学討論会講演要旨集、p568-569、2000
8. 栗山清治、欧陽通他、工業用水、pp29-36、1998
9. 欧陽通、王寧、岩島清他、環境化学、Vol.9、pp347-357、1999
10. 三浦勉、森本隆夫他、分析化学、Vol.49、No.4.、pp245-249、2000
11. 日本工業規格JIS K0128「用水・排水中の農薬試験方法」
12. 日本工業規格JIS K0312「工業用水・工場排水中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」
13. 栗山清治他、第9回環境化学討論会講演要旨集、pp336-337、2000
14. http://www.sii.co.jp/kgk/contruct/sft/index.html
15. モバイル型分析装置の現状と将来展望に関する調査研究報告書、(財)機械システム振興協会、2003
16. 林陽子、計測技術、Vol.27、(2)、p129、1999
17. 田中龍彦、ぶんせき、(2)、p62、2001

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